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第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
ハナの白い腕が、信長が肩にかけていた羽織の裾を掴んで静かに引いた。
白い羽織がその肩から落ち、それを受け止め、ハナは丁寧に畳んで文机の上に置く。
それから、風呂敷に入れて抱えてきた、仕上がったばかりの長羽織を取り出した。
正面から、信長の肩にそれを掛ける。
長羽織の袷を掴んだまま、信長を見つめた。
「これは…?貴様が仕立てたものか」
「この反物を見た時、信長様にきっと似合うと思って…」
内緒で、毎晩少しずつ仕立てていたと。
恥ずかしそうに、嬉しそうに微笑むハナ。
信長はその羽織をそっと手で撫でる。
滑らかな手触りの正絹。
裾は白地を残し、上に上がるにつれて茜色に染め上げられていた。
そして、胸元当たりから徐々に闇夜のような黒に変わっていくそれは、背後の茜空とは異なり。
まるで――…
「夜明けの空みたいに、見えませんか?」
「夜明けか…」
信長の顔に満足げな笑みが浮かぶ。
その顔を見つめ、ハナが呟く。
「私にとっては、貴方がそうです…」
「……ハナ?」
袷を握る手に、力を籠める。
ハナがその手を引き寄せた。
信長は抗うことなく、誘われるままにその身を屈めた。
夕焼けが沈みきるその間際。
最も赤く空が染まるその茜の中で。
二人の唇が静かに重なった。