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水面下の梟【ヒロアカ】

第15章 夜明けの前兆


***
手洗いに行こうと部屋を出ると、廊下に紫色の物体が倒れていた。
葡萄のようなそれは、どう見ても間違いなくクラスメイトだ。

男子部屋は反対側にある。
なぜここに、と思うが、考えるまでもない事だった。

「夜這い?いい趣味してるじゃん」

そういえば木椰区に買い物へ行った時、覗き見がどうとか夜這いがどうとか言ってたっけ。

顔をのぞき込むまでもない。
うつ伏せになって倒れているが、気を失っているのではない。
倒れている振りをしているだけだろう。

証拠に、わざと足音をたてて近づくと、ぴくりと小さく体が揺れた。

「ねぇ…」

耳にそっと唇を寄せる。

「春に私にされた事、覚えてないの?
それとも、続き、して欲しい?」

故意的に、声から温度を捨てた。
怯えたのか、びくっと体を震わせ、峰田は起き上がった。

「っ…」
「なーんて冗談だけど、さ?早く寝なよ、疲れてるから行き倒れてたんでしょ?」

ぱっと手を広げにこにこする。
行き倒れてたという事にしてあげよう、と珍しく良心が働いた。

すると、なぁ、と小さく問われる。



「1つ…いいか」



声が震えている。

「うん。何?」

拳を握りしめているし、よほど聞き辛い事なのかもしれない。
これでくだらない質問だったら殴る、と終綴はひっそり決めた。

しかし、紡がれた質問は、寧ろ終綴が殴られた気分になるようなものだった。

「依田、おまえ、何もんだ…?」



「何者って?私は、私だよ」



「おまえさ…おかしいよ…頭いいのは知ってるし、運動神経も抜群に良いのはわかる、けどよぉ、USJといい実技授業といい、…おまえ、何か変だぞ!!?」




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