第14章 運命の番(過去編)1.5
「ただのβ性に近いα性がいきがらないで下さらない?彼等は私の愛しい番、他所を当たりなさいな…後Ωを性欲処理として考えるのなら、貴方方の陰茎を今すぐにでも潰すわよ」
「っ…」
ひゅっ…と男達は喉が鳴る。言葉すら出せずただただ立ち尽くし顔を真っ青にして目を泳がせるだけである。まさに蛇に睨まれた蛙といった所かとクラクラする頭で必死に考えた。
「速やかに私の視界から消えなさい。さもなくば…貴方方を社会的抹消致しますので悪しからず」
「す、すみませんでしたっ!」
「お、おぃ…待てよっ!」
へっぴり腰で逃げて行く男達を人睨みし、無表情のまま俺と萩原を見下ろした。その顔にゾクリと背筋が凍る。しかし直ぐに心配したように眉を落とし屈みつつ手を伸ばした。そっと頬を撫でられる、俺の知っているαの匂い…落ち着くが、ムラムラしてしまうのは頂けない。
「陣平さん、研二さん…ごめんなさい。私が二人と離れたからこんなことに。なにか危ないことに巻き込まれていませんか?」
「ぃや、平気だ…ありがとう」
「ぅ、うん…怪我もないから、心配しなくていいよ?」
そうだ、怪我はない。ただ春枝の匂いに当てられただけだ。というか春枝が怒ったところを見るのは初めてだと火照る体をなんとか落ち着かせる。触られる手にも感じてしまい、無意識にΩの匂いを溢れさせてしまうことが恥ずかしい。直ぐに春枝は察したのか、申し訳なさげに悲しそうな顔をして手を離した。違う、そんな顔をさせたいわけじゃない…俺達を助けてくれたのだ。お礼をいうことはあったとしても、責任を負わせたいわけじゃーー…だが頭では分かっているのに、体が追い付いて来ない。それがなにより悔しくて歯がゆかった。
「ごめんなさい…結局は私のせいで」
「違うっ…はぁ、お前のせいじゃねぇ…よ」
「そぅ…だから…ふぅっ…気にしない、で?」
大丈夫だと笑って見せても、春枝は傷付いた顔で俯かせて直ぐに連絡を入れた。今すぐ迎えに来てと手短に伝えて通話を切る。
「やっぱり…私と遠出したら、駄目ですね」
皆、私のα性のフェロモンに巻き込まれてヒートになっちゃう…そう悲しそうに目を伏せていた。過去にきっとなにかあったのだろう…恋焦がれるように他人の家族を見つめていたことと何か関係があるのかとヒートで濡れる中が気持ち悪く思い下唇を強く噛んだ。
