第14章 小さなお別れと告白
「何というか、承太郎、彼女に優しい言葉をかけるより、行動でそれを示しているというか……」
承太郎なりに、とても気にかけているように見える。
それにいつも、由来の右側にいる。
それは、彼女が右目が見えないから、死角で彼女を守ろうとしているんじゃあないのか?
「……ハァ」
承太郎はため息を付いて、一言だけ添える。
「確かに、嫌いじゃあねェ。アイツの前では、絶対に言うなよ」
え、え…!
つ、つ、つまり、それは、YESということなのか?
承太郎、やっぱり由来のような物静かでいい子がタイプなのか?
花京院は敵と遭遇するときとは違うドキドキを味わいつつ、承太郎はまたさらに一言を添える。
それも、いっそう哀愁感を漂わせた。
「アイツは俺のことがきっと苦手だ」
「え?」
花京院の高揚感は、y=-xの2乗が原点を通る時のように、急降下した。
「どういうことなんだ?直接、何か言われたのかい?」
「……何も言わねえからだ」
「え?」
ますます、言葉の意図が分からなくなり、花京院は困惑した。
しかし承太郎は、花京院に理解してもらうというより、彼女のことを自分なりに理解していた。
なぜなら、由来が物心つく前に母親に殺されかけたという事実を知っているのは、自分だけだったから。
(……アイツは以前、俺のことを「羨ましい」と言った。“自分自身”(由来)に無い物を、俺が持っていると思っているからだ)
自分から人助けするくせに、他人からの好意は受け取らねえ。
多分アイツは、誰かを好きになるとか好かれるとか、そういうのを怖がってんだ。
だからいつも物静かで、何も言わねえんだ。
「アイツの性格は、ここ数週間で何となくは分かってる。だから特に別に何もしねェ。今まで通りだ」
「承太郎……」
やはり承太郎、少し変わった気がするな。前より少し、物腰が柔らかくなったのか?
これも全て、由来の影響かな?