第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
ジョジョ達一行は敵スタンドの刺客によって、先に進むことを余儀なくされた。
警察に厄介になる前に、インドを抜けようと車で移動していた。
インドも北部へくると、ヒマラヤも近いせいかさすがに肌寒い。
由来の能力で自動冷房を車内でやっていたが、その必要もなくなってきた。
「間もなくパキスタン国境か。インドとも、もうお別れですね」
花京院は言う。
「うむ。最初は「何ちゅう国だ!」と思ったが、今はカルカッタの雑踏やガンガーの水の流れが早くもなつかしいのォ」
ジョセフもまた妙な懐かしさを呟いた。
「おれはもう一度戻って来るぜ。アヴドゥルの墓をきっちりと作りにな」
ポルナレフは国のことより、そこに取り残した友のことを呟いた。
車内は物々しい雰囲気に包まれ、全員が口を閉ざした。
ムードメーカー的存在であるポルナレフが厳かだと、空気ががらりと変わる。
しりとりや古今東西など、狭い空間で遊ぶようなことはできない。
(アヴドゥルさん…)
由来は残った左目で窓の外を眺めながらも、置いてきた仲間のことを思った。
かつて自分にも似た経験があったことで、心寂しく思わずにはいられなかった。
・・・・
(あの時の私は、仲間意識の欠片も無かったが……)
ブロロローッ
「!」
重低音と一緒に外で砂埃が舞って、視線を前に向けた。
いつの間にか自分達の車の前に、もう一台別の車が走っているのが見えた。
(あの車。いつからいたんだ?)
窓が開いていることで、砂埃が入ってきて思わずむせた。
「前の車、チンタラ走ってんじゃねーぜ。じゃまだ。コホッコホッ」
由来以外の全員もむせた。
「追い抜くぜ!」
ポルナレフは勢いよくハンドルを右に切って、強引に前の車を抜いた。
その反動で由来はよろめいて、右隣の承太郎の腕に寄っかかってしまった。
「あ、ごめん」
「ああ」
由来はすぐ姿勢を正した。