第5章 最低で最悪なアイツ
「……あれ…」
ベランダから戻ってソファーに座ったまでは覚えてる
軟らかな太陽の光を纏って、心地良くてウトウトしちゃって…
気付けば昼をとうに過ぎていて。
のんびり昼寝なんて久しくしてなかった
「腹減ったな」
智さんが作っておいてくれた昼御飯の事をふと思い出したら急にお腹が空いてきた
「全然残り物なんかじゃないじゃん」
自分の弁当の残り物だって言ってたのに明らかに丸々一人前あるソレの一つを
『チンして食べてね』と言われたにも関わらず外したラップの隙間からヒョイっと摘んだ
「凄ぇ。タコさんだ…」
保育園の親子遠足に行った事は一度も無かったから、小学校に上がって初めての遠足の時は心を踊らせたっけ
一番楽しみにしていた弁当は母親が買ってくるスーパーの惣菜と良く似ていた
友達のカラフルな弁当が凄く羨ましかったんだ
その中で一際存在感のあった“タコさんウインナー”
どうしてもそれを食べてみたくて、遠足から帰って母親に伝えようとしたけど
面倒臭いと足蹴にされたのを今でも鮮明に覚えてる