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混合短編集

第9章 【刀剣乱舞✕東京喰種】よだれ塗れの刀剣は主がお好き


「でも一回くらい勝ちたかったなー」
「主にかっこ悪いところ見せちゃったしね」


本当に二人の言う通りだと思う。

いくら僕自身のるまを達成出来たとはいえ、その直後後ろからばっさり斬られて呆気なく戦線離脱。

達成の安堵から油断していたなんて、隊長を任されていたのに情けないったらない。
帰ったら、死角からの不意打ちへの対応の鍛錬を主にお願いしよう。そう心に誓った。


「さあ、帰ろうか」

予定されていた演練は終わったのだから早く帰らなくては。
嗚呼、厨は無事なのだろうか。
いや、無事であってくれ。切実に。

厨破壊の天才たちが何もしでかしていないことを切に祈りながら、こちらに向かって必死に手を振る主のもとへ足を進めた。



黒星ばかりの戦果記録を受け付けに提出し、出店に目移りする主に寄り道はしないよと伝えて帰路に着こうとしたその時だった。

「この役立たず!」

演練を終えた審神者や刀剣男士が次第に減り、すし詰め状態だった会場が広々として見えるようになった頃、一際目立つ甲高い怒声が響き渡った。

「どうかしたのかなー」
「あ!主!」
「ダメだよ、主さん!」

好奇心の塊と言っても過言ではない主は、僕らの制止を聞き流してふらふらと声の出処へと向かってしまった。
主の歩行速度は思いのほか速く、なかなか追いつけない。
ようやく、足を止めた主に追いついた僕らの目に飛び込んできたものは、我が目を疑うものだった。


「あれほど負けるなって言ったのに!勝ちより負けの方が多いってなんなの!」
「ぐッ」

最初に、怒声と共に視界に入ったのは紅白の巫女装束を纏う華奢な少女。次いでその少女に足蹴にされている大倶利伽羅だ。

無抵抗なまま蹴られ続ける彼の露出する肌という肌は、彼の浅黒い肌でも誤魔化せない程の赤黒い痣だらけ。
それは日々の鍛錬や出陣によるものではなく、彼の主であろう少女によってつけられたと推測する。

少女の様子や怪我の度合いを見る限り、その推測も間違いではないのだろう。

「私は!勝てと言った!負けていいとは!言ってない!このッ、役立たず!」

少女は言葉を区切る度に、大倶利伽羅の背や脇腹や頭を蹴る。
痛みに呻き、動くことさえしない彼を憐れむ仕草はなく、そこに情け容赦など見当たらなかった。
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