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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第5章 姫君の憂鬱(菅原孝支)


菅原くんと仲良くなったのは、いつか覚えていないけど、確か私の親があまりにも頻繁に喧嘩をするようになってからだった気がする。
別段グレたというわけではなかったけど、なんとなく居心地悪い家にいたくなくて、夜遅くまで学校に残ってることが多かった。
「あれ?さん、部活動終わったよ?」
「そう、なんだ…」
「真っ暗だし近くまで送るよ、さんち、どこだっけ?」
「…今にも変わりそうな苗字で呼ばないで欲しいなぁ」
「え!?ご、ごめん、知らなかったから……ええっと、さん、でいい?」
真っ白な肌が赤くなる。
なんとなく、可愛いと思った。
「よくできました。
じゃあ、送ってよ。道案内はしてあげる」
「はいはい」
呆れて笑いながら送ってくれて、少しだけ気が紛れた。
何回もお願いして、同じ道を歩いたのに。

初めて告白してくれたのは、菅原くんじゃなかった。
なんでか、つまんない、と思った。
他に好きな子いる気配もなかったんだけど。
手っ取り早く愛情が欲しかった私は、何も考えないで承諾してしまった。
どうにも私の空いた穴には何も埋まらず、結局虚しい日々は終わっていった。
その頃には、家には誰も帰ってきてなかった。
学校の書類だと嘘をついて工作した紙に親の署名を貰った。
これであっさり、本当にあっさりアパートを借りてしまった。
(疑ってくれると思ったのにな……)
ますます寂しくなった。
新しい城に、間を開けずに男の人を呼んだ。
そのくらい寂しい。
みんな私に愛情を注いでくれたけれど、それだけだった。
(意味、ないな…)
私を心配したのは、菅原くんだけ。
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