【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第2章 罪と罰の澱の中で
その後は夕飯の味も分からず、よろよろと宿舎への道を歩いていると闇の中に誰かいる。
蝋燭も電気も貴重だから外は真っ暗なのに。
ひっ、誰?
も、もしかして、ユーレイとかいうやつ?
タバティエールが言ってた。暗い夜には『ぬらぬらおばけ』が出るって!
それで食べ物を食べ尽くすんだって!
ひぃ、俺は食べられたりしないよね?
周りを見渡すが誰もいない。
ああー、人の身になって嬉しい事もいっぱいあるけど、今は銃に戻りたい。
本体は……手入れの為にラボに預けてある。
ベスくんなんかは寝る前に持ち帰って自分で手入れしてるみたいだけど俺は朝まで預けっぱなしにしていた。
何か……な、にも、無い。
あわあわ慌てていると闇の中にいたそれがこちらに気が付いたらしく近付いてくる。
どうしよう、どうしよう。
俺達丸腰じゃ何も出来ないよぅ!
「シャルル?」
ガタガタ震えていると雲に隠れていた月が顔を出し辺りが照らされる。
サァと降り注ぐ月光に照らされたのは……