第8章 S&N
「これとこれと……あとこれを1つずつ」
「はい、少々お待ち下さい」
手早く包み、袋に入れてくれる
「ありがとうございました」
支払いを済ませ、笑顔で見送られる
袋を隠しつつ家に帰り、自室で食べた
うちのとはまた違う感じでとても美味しかった
それから、俺は度々『にのみ屋』に通うようになった
もともと甘い物は好きだし美味しかったから、というのは建前で、あいつに会いたかったから
まだこの気持ちが恋だとは思っていなかったけど、あの屈託のない笑顔をみせてくれたあいつに、どこか惹かれていた
通ううちに顔馴染みになり、親父さんはいないことが多かったから、少しずつ世間話をするようになった
聞けば弟と同い年らしい
そんな気安さもあってか仲良くなり、お互い名前で呼び合うほどになった
「翔さん、コレ今日出した新作なんだけど」
「美味そう!じゃあそれも入れて」
「はーい、ほんとに甘い物に目がないね(笑)」
「だってかずの家のは美味いんだもん(笑)」
「はいはい(笑)毎度ありがとうございます」