第2章 ふたりの距離
昔の真島だったら、こんなに物事を考える事はなかっただろう。
考える前に行動。
その後の結果なんて、あくまでも結果に過ぎない。
それが嫌なら自分の力で無理矢理にでも変えてしまえばいい。
欲しいものは全て手にいれないと気が済まなかった。
そのぶん対立が多かった。
嶋野とも度々喧嘩をしたし東城会を敵に回した事もある。
周りが何て言おうと自分の信念を曲げた事なんてなかったのに、今回だけは違う。
きっと雅美に対する気持ちが愛情という一際特別なものに変わっているからだろう。
だからこそ考え、苦しみ、
そして悩んでしまうのだ。
雅美の全てが欲しいと思えば思うほどに。
心も体も小さな吐息さえも自分のモノにしたい。
「……」
その時、真島の前に立ちはだかる見知らぬ男の存在が頭を過ぎった。
少なくとも雅美と深く関係しているであろうその男に、真島は強い憤りを感じていた。
電話一本で雅美との大切な時間を一瞬で壊した男……。
もしそんな奴が雅美の恋人だとしたら?
雅美の体を好きな時に好きなだけ弄べる存在だとしたら――――?
減速して、真島の乗る車は漸く東城会の本部に止まった。
真島は無言のまま車を降りて、日本家屋の広大な敷地へ足を踏み入れる。
「――随分機嫌が悪そうやな、真島」
その時後ろから声をかけられたが真島は聞く耳もたず、歩く足を止めようとしない。
「きぃとんのか、ワレ!」
真島の背後から肩をガッと掴み、強引に足を止めたのは神田だった。
「さわんなボケ。今、ごっつ気分悪いねん」
「ははぁん、あれやな。女と喧嘩でもしたんちゃう?」
ニヤリと笑って言った神田に真島の眉毛がピクリと反応する。
「この前はうちの組員が世話になったみたいやないか。何でも?女を助けてみたいで」
その口ぶりはわざと真島の気分を逆なでするようだ。
「ワレがそない人間とは思えへんかったわ!とうとう頭おかしくなったんとちゃうか!」
ガハハと高笑いする神田。
その瞬間――!