第5章 彼女の涙。
まぁが俺の家に来てから思ったことは、2つ。
1つは、可愛い子だな。
もう1つは…俺や俺の両親の前でいつも笑っていること。
まぁの両親が亡くなって、まだ日が浅い。
中学一年生。普通なら、何も考えられず、普通の生活を送ることなど到底できないはずだ。
なのに、涙の1つも見せない。
不思議だった。
そんなある日、夜中にトイレで目が覚めた俺は、隣のまぁの部屋の前を通り、トイレに行く。
うっ…うぅっ……グスッ…。
静かな廊下にはかすかに泣き声が聞こえる。
あぁ……。この子は、強い。
そう思った。
俺たちに迷惑や心配をかけまいと、決して自分の弱さを見せなかったんだ…。
俺は、ただただ壁に背を向けて立っていることしかできなかった。