【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第5章 菊合
四人だけの“家族会議”から数時間後。
赤葦は一人、書斎で机に向かっていた。
部屋の照明を落とし、明かりは手元を照らすランプだけ。
あとは窓から差し込む月光ぐらいのもので、部屋の四方の隅は重い闇が落ちたままだ。
ああ・・・落ち着く。
俺にはこれくらいがちょうどいい。
赤葦は暗闇に目を向け、小さく溜息を吐いた。
この中ならば感情も、心も、隠さずとも他人に知られる恐れはない。
光太郎のそばにいると時々、錯覚してしまいそうになる。
自分も太陽の下で生きていい人間なのではないか、と。
「───俺は梟なのに」
Who'll dig his grave?
誰がコマドリの墓を掘る?
I, said the Owl, with my pick and shovel, I'll dig his grave.
それは私、フクロウが言った
私のピックとシャベルで墓を掘ろう
闇の中でしか生きられない梟は、殺された駒鳥のために墓を掘る。
そうやって語ることのできない真実や思慕をいくつも埋めてきた。
これからもそうしていくだろう。
“赤葦家の人間”として。
赤葦が再び手元に視線を落とした、その時。
「おーい、赤葦。いるか??」
コンコンと扉を叩く音が二度した後、ガチャリとドアが開いた。
寝巻浴衣にガウンを羽織った光太郎は書斎に入るなり、あまりの暗さに顔をしかめる。
「こんなに暗くて大丈夫なの?」
「落ち着きます」
と言われたそばから、光太郎はお構いなしに消えていたランプに火を灯していった。
結局、煌々と明かるくなってしまった書斎に、赤葦は溜息を吐く。
「ところで、何か御用ですか?」
「お前、牛島家に出す手紙を書いているんだろ」
「・・・はい」
光太郎は筆を持つ赤葦の右手をジッと見ながら、“そうか”と呟いた。