第8章 監獄と闇の騎士
ヒルトは後方は目線を向け、離れた場所にいたユリエフへ手を振って話した
「ふぅー・・
まったく、少しはご自身の心配をしてください」
冷や汗を流しながら両手に光り輝く魔法印を浮かばせ、ユリエフは魔法の結界の解除を行い、ヒルトの元へ近づいてくる
「ご無事でなによりです・・が、彼等は・・」
ユリエフは意識を失い、傷が重症であるアークを見つめ、心配する
「我々の事は我々で対処する
この傷も、アークの魔力が回復すれば何とでもなる。
それより、主は・・?」
つい先そこにいたはずのクライヴの姿はどこにもなく
辺りを見渡すサルナス
「あの爆発は俺を殺すためというより、この場から消えるための時間稼ぎだったんだ」
突き刺していた大剣を抜き取り、纏っていた風は止み、剣を消し、納めるヒルト
冷静に話すその状態は、全てを悟ったようだった
「あの時、最後に俺に見せた表情が
とても・・悲しそうだった」
「ヒルト君?」
「ーーーーなぁ、ユリエフ
本当にクライヴはミレイアさんを救うためだけに行ったのかな」
「どういう意味ですか?」
「クライヴは・・ミレイアさんを救う方法を知って、今回の行動をとった・・アークさんの魔力を奪ったのも、俺達を襲ったのも・・全て足止めだったーーー?」
小声で呟きながら考えるヒルト
先の爆発の寸前に見たクライヴの表情が
どこか悲しく、虚しそうにしていたのが脳に焼きつき、不自然に思えた
そして、一つの可能性にたどり着く
「サルナスさん、ミレイアさんの元へクライヴが行ってから
鬼神は自ら姿を現わすかな?」
「・・・いや、恐らく鬼神は姿を現わす事なく、彼女を操ってクライヴ様を壊すだろ」
「だったら、無理矢理鬼神を呼び出す事が必要・・
そのための・・魔力ーーー!」
「ヒルト君、さっきから勝手に話を進めすぎです
私達にも共有してください」
困った表情で話すユリエフ
「あ、ごめん。
きっとクライヴは、ミレイアさんを救うのと同時に死ぬつもりだ」
「?!」
思わずサルナスの表情が歪み、ヒルトへ僅かな敵意を見せる
「ヒルト・クローズ、それは根拠があって言っているんだな?
貴様の軽々しい妄想での発言なら、今すぐ撤回してもいたい」
「根拠があるんだ、サルナスさん」
ヒルトはサルナスの言葉に動揺することなく
淡々と推理を語っていく
