第4章 夢の肉球マッサージ
伊豆くんの手を見ると、鉤爪がキラリと光っていた。
そうだ、そういえばパンダって、爪があるんだ。
猫なんかは爪を出したりしまったりできるものだけど、パンダはそれが出来ないらしい。
冗談じゃない。こんな手でマッサージされた日には私の脚は血みどろバイオレンスである。
見ると、床のカーペットもところどころ毛羽立っていた。伊豆くんが爪を出した状態で歩き回るからだろう。
これは困った。
「もう、しょうがないなあ。爪切りするからそこ座って!」
ぺたりと座り込んだ伊豆くんの手を持って爪切りを当ててみた、が…。
こ、怖い。
大きく伸びた爪は湾曲し、いかにも猛獣という感じだ。こんなもん爪切りでバツンと切り落として大丈夫なのだろうか。
しかし悩んでも仕方ない。大きく深呼吸して、えいやっと爪切りに力をこめた。
ゴリッ!という感触がした。
伊豆くんがギャオッと鳴いて後ろに転げた。
「うわあ!い、痛かった!?ごめんね!」
伊豆くんは起き上がり、首を左右に振った。痛くはなくて、ただビックリしただけらしい。私だって盛大にビックリした。
しかしどうも、人間用の爪切りではパンダの爪を切るのにムリがあるようだ。
仕方なく私はヤスリで一本一本短く丸くしていった。
伊豆くんはずっとビクビクして顔を背けていたが、なんとか手足4本とも削り終えた。
よしこれで、マッサージがしてもらえる!