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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第8章 秋は夕暮れ②


「ハッ!きったねー部屋!」


休憩室だと通された部屋を見回して荒北は毒づいた。
外から見た印象とは少し違うが荒北はその部屋に見覚えがあった。
荒北は胸の辺りが疼くのを感じた。


ここは、、、あの部屋か。


通されたその部屋は、荒北が巧と沙織が仲よさそうに並んで座っていたのを目撃した部屋だった。
荒北は部屋の中を興味無さそうに見回しながら、2人が座っていたと思われる古いソファをチラリと見た。
胸の辺りがまた疼いた。




「きったねーソファ!」



荒北はさっきよりも大きな声で再び毒づいた。
その荒北の言葉に巧は苦笑した。


「まぁまぁ、そう言わずに。慣れれば結構居心地がいいんだ」


そう言ってソファとは少し離れたところにあるテーブルを挟んで、ギィギィと音を立てるパイプイスを2つ並べ、


「どうぞ」


巧はそう笑って自分は奥の席、手前側の席に荒北を導いた。



「ハッ!!」



荒北は古いパイプイスにドカンと大げさな音を立てて腰かけた。


「それじゃ、、、」



巧は姿勢を正して肘をテーブルに乗せた。


「、、、おぅ」


荒北もフッと冷静になって巧が出した手を少し乱暴に握った。



「はは」
その瞬間、巧が笑った。


「ア?何だコラ」
荒北は途端に不機嫌になった。
巧の笑いのツボがいまいち分からない。


「いや、君の手が細いし柔らかいしで、、、ぷぷっ。女の子の手を握っているみたいだなって、、、」


多少悪いと思っているのか巧は堪えるような仕草をしたが堪えきれていない。
それがさらに荒北をイラつかせた。



「、、、ッ!!ざけんな!オッサン!ナメてンじゃねーヨっっ!!」


「ごめんね!、、、でも君の手を握ってると、つい思い出しちゃってさ、、、」


そう言って巧は急に寂しそうな顔をした。
荒北はコロコロ変わる巧の表情をいちいち相手にしている自分がバカらしくなってため息をついた。



「ハァ、、、ンだそれ。さっさと始めよーぜ」


「そうだったね。それじゃ、、、せーっの!」


間の抜けた掛け声を発して巧が力を入れる。
一方、荒北の腕は力が抜けてガクンと一瞬で手の甲がテーブルを叩いた。


「、、、ッ!テメェ!何だ今のはァ!?」


「エ!違った!?はは、じゃ今のはナシ!」


「ったく!いくぞ!レディ、、、」

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