第8章 秋は夕暮れ②
沙織は諦めたように俯いて部屋に戻った。
そして顔を上げた時、自分の部屋がやけに暗くて静かなことに気がついた。
こんな、、、だったかな。
おかしいな。
アイツが来るまではヘーキでココに1人でいたのに、、、。
沙織は先程まで座っていた場所に腰を下ろした。
いつも1人で座るこの場所も何故か落ち着かなくて、隣を見る。
そこは先程まで荒北が座っていた場所だった。
沙織はその場所を左の手の平でゆっくりとなぞった。
そこにはもう荒北の熱はなかった。
「、、、バァーカチャン」
ふいに、そう言って微笑んだ荒北の顔が浮かんだ。
あの時アイツの肩にもたれかかっていたら、ずっとココに居てくれたかな、、、?
って、ばーかか、私は、、、。
またそんな事が頭を掠めたが、沙織はすぐにかぶりを振って目を伏せた。
あの時のアイツも笑ってた、、、。
でも、、、
いつも吊り上がっていた眉毛が苦しそうに歪んで、いつもは鋭いあの瞳も辛そうで。
沙織はそんな荒北の顔を忘れることができなかった。
「バカはアンタだ、、、」
沙織は大きく息を吸って立ち上がった。
「俺が、、、何とかする?」
ふざけんな。
そんな顔したアンタに何とかしてもらうなんて真っ平だ。
、、、あんな
辛そうな顔。
沙織はギュッと苦しくなった胸を押さえると、サッと素早く立ち上がった。