【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】
第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)
(嬉しいけど、苦しいんだよなあ。主の隣で戦うのは、)
戦う刀らを気遣うように、守るように、立ち回るその白い姿に。
こたえたいと思うのに、もっと強く、ただれるような愛が欲しくなってしまう。
(胸が締め付けられそうで、)
弱いのも、守られなければならないのも、すべて自分のせいなのに。
自分への苛立ちがぬるい硝煙と共に肺に渦巻くのを、自らの依代である刀の柄を軋むほど握りしめて堪えながら、緋雨に声をかける。
「主、大丈夫?」
「私は平気だ。清光が怪我をしていなければそれで良い」
自分が弱いと言うことを露見することになってしまいそうで素直に謝れない清光をしかし、緋雨は責めることなくその安否だけを気にしているようだった。それはそれで自己嫌悪を加速させていくだけだと分かっていても、彼のその底のない優しさに清光はどうしても甘えてしまう。許されればそれで良いと思ってしまう。
「これは私の返り血か。ああすまない、お前の綺麗な顔を汚してしまったな」
緋雨の細長い指が頬についた血糊を撫ぜるともう、触れられた箇所から脊髄までが電撃が走ったように甘く痺れて、先ほどの葛藤も戦っていたときの切迫感も最初からなかったかのように消え去ってしまった。嗚呼、やっぱり愛されるって良い。すべてのわだかまりを棚に上げて手放しで喜んでしまいそうになる。
「~~~っもう! そうやって無茶するなって何度言えば分かるのさ!」
「清光が斬られると思ったら、体が勝手にな。いやすまない、悪いとは思っているよ」
骨の抜けた忠告に、薄く笑む白い顔はもはや見ているこちらが怖くなるほど美しい。まるで職人の粋を尽くして作られた細工人形のようだ。