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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第3章 審神者になった白い鬼




「どう……して、雪鴉(せつあ)が……」


「本来はそう読むのでしたね。失礼いたしました」


 すっかり取り乱して声を震わせる彼に対し、人間たちはやはり一切の感情をのぞかせることなく、それどころか名の読みが違っていたことについて謝罪するという見当違いな反応を示した。


「最後に雪鴉に会われたのはいつですか」
「……もうずっと前だ。80年……いや、90年くらい前……」


 最後に弟に会った記憶は、もうとっくの昔に過ぎ去ったものとして頭の隅の方に追いやられていた。元々ここ数百年間、弟は鬼神の前に姿を見せることは滅多になかった。時折ふらりと彼の元にやってきては、どこから来たとも、どこへ行くとも言わずに去っていく。見たところは穏やかな様子だったが、腹の底では何を考えているのかよく分からない、そういう危うさもぼんやりとはあった。


 けれどそれはほんの小さな種のようなものにすぎなくて、それ以外は特に変わった様子はなく、自分から話さないのならあまりむやみにつつかないでおこうと思って放っておいたのだ。


 きっと、自分と同じように俗世を離れ、穏やかな生活を送っているのだと思っていたのに。


「では、その間に過去へ遡行し歴史をねじ曲げることを画策していたのですね」


「でも、どうして……あの子が、そんなことを、」


 狼狽えながらも聞き返すと、人間は布の下から意外な答えを返してきた。


「詳細は分かりません。が、その動機に貴方様の存在が大きく関わっている可能性は否めないでしょう」


 平生の聡さを失った鬼神はその言葉の意味が飲み込めず、ただ白い方の目を訝しげに歪ませることしか出来ない。


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