第96章 その部屋に光は差さない
side.N
ちゃんとしたメシ食ってないと思ったから、適当に作ったよ。食べるだろ。
風呂沸いてるから先に入ったら?終わったら、髪も拭けよ。
明日も早いって聞いたよ。ゲームは程々にな。
あ、そうだ。
明日もニノんとこ来るからね。一緒に夕飯食べようよ。
なぁ、聞いてるの?
もうっ!聞いてないの?おーい、カズ?かーず?
分かってるよ。でも今イイトコなのよ。
やっとでボスが倒せそうなの。
うるさいとは言わないけど、ちょっとの間、ほっといて。
それは偶然。余裕が無くて、イライラを呑み込めなかった。
それでよく考えずに、勢いだけで口を開いちゃったんだ。
「子供じゃないんだって。しつっこいなぁ!!」
ピシリ、と亀裂が入ったようだった。
潤くんは何一つ悪いことしてないのに。
それなのに、俺が幼稚に苛立ちをぶつけたからだ。
大声で言いきってから、頭が普段の冷静さを取り戻す。
どうしよ、やっちゃったよ。
恐る恐る顔を上げると、笑ってみせる潤くんと目が合う。
けれど、それは酷く歪な、笑みではない何かだ。
瞳に、光が見えない。
初めて見るソレに、背筋が粟立つ。
誤ったのは察するまでもないが、それどころじゃない。
致命的で、決定的な、間違い。
俺はそんな過ちを犯したのかもしれなかった。