第84章 fad
side.A
「どしたの、今日」
全部やるから、とか。
普段はお願いしてもやらないだろうに。
オレの腹に右手を付き、もう一方を背後に回してある。
「何も、無いで、す……ん、ぅ」
シたいって顔の癖して、いつも通りのひねくれ具合だ。
ま、可愛いもんだけどねぇ。
問いに答えつつも、懸命に準備してるんだろう。
ぐちゃぐちゃとローションがえっちな音を立てている。
「ッてか、黙って待って」
「えー…そうやって簡単に言われても」
さっさと食べたいなぁ、とは流石に口に出来なかった。
けど、でも、生殺しは好きじゃない。
始めてすぐは一本だったのが、今や三本も入ってるし。
トロトロじゃん、多分。
そう思うと堪らなくなって、ごくりと生唾を呑む。
「なに、はぁ…突っ込みたく、なった?」
ニノがにやりと挑発的に笑む。
それから、これ見よがしに、後ろから引抜いた指を舐める。
また、喉が鳴った。
ホントやらしい、誰がこうしたんだろうなぁ。
「あんま煽んないでよ。腰、痛めるだろ」
「……うるさいなぁ、もう」
不貞腐れたように呟くと、勝手にオレの下着を脱がし始める。
とっくに窮屈になってたソレに、手早くゴムが付けられた。
先端に温かく、僅かに吸い付くような感触。
左手をオレのに添え、ゆっくりと膝を曲げて呑み込んでいく。
ほんの少し見えるソコから、目が離せない。
「ねぇ、カズ、早く」
思わず動きたくなるのを抑えて、じっと我慢する。
それでも耐えきれず、急かしちゃうのも仕方ないと思う。
だって、散々焦らされてきたんだから。
オレの言葉に、ニノが意地悪く笑う。
なのに、不思議とその瞳には優しい色が滲んで見えた。
「しゃーない、ですね」
そう言うや否や、ニノが思いきり腰を沈めた。
突然の強い快感に、堪らず息を詰める。
もう、イっちゃいそうだった。
「んっ……天国、見せてあげますよ」
その声の甘ったるさに、ドクリと心臓が脈打った。