第39章 膝枕と戦女神
謙信は景家と政務に関わる話をしながら、自分の部屋ではなく広間へとまっすぐに進む。
後に続くようにして広間に入ると景家が慣れた手つきでお茶を入れ、全員に配りながら話を始めた。
『皆様戻ってきたばかりの所ですが謙信様が不在の間に報告したいことがございました』
『場所がわかったのか』
『はい』
謙信と信玄は何の話なのかわかっているようだが、他の者は全員話の内容が理解出来ない。
『謙信様?何の場所ですか?』
直美からの問いに謙信が答える。
『先日捕らえた男を尋問し続け、毛利お抱えの世鬼一族の者たちの根城となる場所を見つけた。景家、それで間違いないな』
『はい。現在軒猿の者たちに見張りをさせています』
『あの男、単なる捨て駒かと思っていたが一体どんな手を使って情報を吐かせたんだ?』
一乗谷へ向かう前に一緒に尋問をしていた信玄が興味深そうに話を聞いている。
『特別な事はしていませんよ。言わなければ一族皆殺しにして根絶やしにすると、刀を突きつけながら言っただけです』
(皆殺し!しかも根絶やし!?怖っ!)
景家のその言葉に佐助も姿勢を正しながら眼鏡をクイッと上げた。
『さすが景家だ、よくやった。今すぐに港と根城付近の街道を閉鎖しておけ。準備が整い次第潰しに行く。鼠一匹外に逃がすな』
『かしこまりました。今すぐに指示します』
景家は返事をすると足早に広間を出ていく。
『今帰ってきたばっかなのにこれから行くんですか?』
『そうだ、逃げられては意味がない。幸村、信玄の代わりに来い。一刻後を目処に発つから準備しておけ』
謙信にそう告げられた幸村は観念した様に立ち上がり、佐助と共に広間を出て行くのだった。