第34章 春日山城、再び
春日山では
謙信と馬に乗り、そのまま眠ってしまった直美がようやく目を覚ました。
『んん~……ん?……謙信様?……ああっ!!』
うっかり寝てしまった事に気がつき、自分に呆れて言葉が続かなくなる。
一体どのくらい寝てしまったのだろうか。
体がスッキリとしている感覚から、寝ていたのが5分や10分ではないことだけは分かった。
『謙信様、ごめんなさい!うっかり寝てしまいました。あまりにも気持ちが良かったので…』
『構わん。初めての場所でなくとも、城の中も外もあんなに人の目があっては落ち着かぬだろう』
確かにその通りだった。
城下町で噂が広まったのはともかく、やはり城の中でもあちこちから常に視線を感じていたのだ。
『馬の上が落ち着くのであればまたこうして連れてきてやる。休めるときに休まねばいざという時に体が言うことを聞かなくなるからな』
(うっ、優しい…調子狂っちゃう。でも昼寝するには気持ちが良くて極上の場所だったな。複雑だけど感謝します)
『ありがとうございます。そういえば謙信様が寝ているのを見たことがありませんけど、ちゃんと休まれてますか?』
特に何も考えずにした質問だったのに、捉え方一つで会話が想定外の方向へ進んで行く。