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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第3章 対人戦闘訓練




 バシィッ!!


 鋭い音と共に、構えられていたはずの勝己の右腕が思いきり体の外側に弾き飛ばされた。転校生が伸びた爪の甲で、勝己の腕を斜めに払い飛ばしたのだ。


 衝撃で片足が浮き、大きく体勢が崩れた勝己は何とか迎撃しようと試みたが、転校生の次手の方が遥かに速かった。勝己の腕を払った左腕の勢いをそのまま利用し、左足を軸にして一回転、翼をうまく使って加速した動きを右足に乗せ、勝己の無防備になった腹部を一閃した。ボゴッ、と鈍い音と共に、蹴り飛ばされた勝己の体が数メートルの路地をごろごろと転がっていく。


 勝己が吹き飛ばされた衝撃で舞い上がった砂埃の中、観戦していたクラスメート達は唖然とした。今目の前で何が起こったのか、それを飲み込むのすら難しい一瞬の出来事だったからだ。


「すごい……」


 出久は思わず感嘆の息を漏らした。転校生の動きがあまりに素早く、また洗練されていたからだ。ほとんど個性を使うことすらなく、勝己ほどの実力者をまったく寄せつけずに立ち回る、そんな芸当ができる者がいったいこの1ーAに何人いるだろうか。


 何か見てはいけないものを見ているような気分になり、出久の額からするりと一筋の汗が滑り落ちる。幼い頃からあれほどに憧れ、目標として見据えていた幼なじみが、まるで子どものように軽くあしらわれている。いつもは堂々として動きにも迷いがない、クラス随一の戦闘力を誇る勝己が、今は為す術もなく擦り傷だらけで路地の端っこに放り出されている。その様は出久の胸を妙にざわつかせた。


 が、それでも一分たりとも視線を逸らすことができない。ただ傍観している者すら支配する、それほどの気迫を、転校生はその黒い翼のように背中に纏っていた。


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