【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第3章 対人戦闘訓練
「クソッ……が、まだだ!!」
渾身の一撃をあまりにも容易くかわされ、早々に勝己の苛立ちのメーターが限界まで振り切れた。すぐに振り向き、鋭く左足を踏み出す。焦ったのか、まだ右からの攻撃だ。転校生は今度は力を抜くようにして上体を後ろに倒した。対象物を失って宙をかく勝己の右腕を下から掴み、そのまま右、勝己から見て左の方に思い切り引っ張る。体勢を崩された勝己は咄嗟に空いた左の手のひらを爆破させて立て直そうとしたが、踏ん張ろうとした左足を転校生の右足に掬われ、さらにバランスを崩してしまった。大きくつんのめるのを回避しようと、何とか体を丸め地面の上でぐるりと前回りをする。数mの距離をとってすぐさま振り向くと、既に臨戦態勢で体を構えた転校生と視線がぶつかった。
勝己を見下ろすようにして、整った顔がにこりと微笑む。
「うまいね。でもまだまだだ」
「あ”ぁ!?」
さも余裕だとばかりに言われ、勝己は思わず凄んだ。それにも動じず、転校生の目がきらりと赤い光をこぼす。
「知らないもんね。君は、まだ」
その小さな、呟きとも言えないような呟きを、もっとも近くにいた勝己だけが確かに聞いた。抑揚がなく、何かの感情を抑えつけたように妙に平坦なその声は、聞く者の心をざわつかせる不思議な響きをはらんでいた。
勝己の橙色の瞳に、転校生の端正な笑顔が映り込む。
「今度はこっちからいくよ」