【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
日没前なのに電気もついていない薄暗い部屋で、その男は出久を待っていた。
「いやぁ、待たせて申し訳なかったね。緑谷出久くん」
少年のような、老人のような、年齢を定めにくい不思議な響きをもった声だった。縦長の部屋の奥、大きな窓の正面に置かれた執務机の前に、声の主とおぼしき白衣の男が立っている。
適当に切りそろえたようなざんばら髪は、薄暗い部屋でも輝くように白い。血をこぼしたようなどす赤い左目と、ほの明るくひかる乳白色の右目は美しい猫目形だ。薄く筆を引いたような唇は笑み、酷薄そうな、それでいてどこまでも優しい、不思議でいびつな表情を作り出している。
「遅いかも知れないけど言っておこうか。ようこそ、「アザミの家」へ」
腕を広げてのたまう男の姿は、まるで舞台の道化のように、どこか奇妙で、ものがなしかった。