第28章 1 years later①
《まぁ、雨よりは晴れの方が気持ちいいかもね》
「そうだねー、あ、そういえば・・・」
《ん?》
「今朝、またそっちに荷物送ったからね」
《ほんと?わー、嬉しいかも》
「かもってなによー」
言葉だけみたら棒読みだけど、きっと喜んでるに違いない。声は弾んでいるから。
2ヶ月に一度、私は日本からイタリアへ荷物を送ってる。中身は日本のお菓子や調味料や缶詰なんだけど、異国で暮らす及川さんはそれを毎回喜んでくれている。
「そっちに届くまでまだ時間かかると思うけど楽しみにしといてね」
「なーに、牛乳パンの詰め合わせでも送ってくれてたの?」
「パンなんか送ってる間に消費期限過ぎちゃってダメになっちゃうでしょ〜。普通のお菓子とかよ」
この1年、一度も日本に帰ってきてない及川さんは、イタリアの食べ物に慣れたとはいえ、やっぱり日本の食べ物がいいってよくぼやいてる。だからこうして遠い所でバレーを頑張ってる彼にとって少しでも癒しになるように、私に出来ることをしたいと思ってやり始めて、もう1年・・・
ほんと早かった。
早かったけど、待ち遠しかったな・・・。
「もう、こうして荷物送るのも最後だね・・・」
《んー、まぁそうだね。こっちのリーグはこないだ終わったし、あとはもう一個の大会がある・・・それ終わったら契約期間終了っ♪》
及川さんは元々、リーグまでの短期契約でイタリアへ行った。けれど向こうでの活躍を認められて、もう1年延長して欲しいと言われた。それは本当に凄いことだけど、及川さんは日本の自チームに帰ってこの経験を活かしたいと言って丁重に断った。彼らしい返事だと思った。
だから今のチームの監督は1年の延長は諦めたみたいだけど、リーグ終わって、2ヶ月先にある大きな大会まではいてほしいと及川さんに頼み込んだらしい。だから本当は3月で帰国する予定だった及川さんはその頼みをのんで2ヶ月帰国を先延ばしにしたんだよね。
それを聞いた時は、頑張ってねって言った反面、内心すっごぉぉぉぉく、残念だったなぁ。笑
だって、本当に、
及川さんが帰ってくるのを楽しみにしてるから・・・
口には出さないけどね。
カレンダーを何度も見直して、
帰ってくるまでの日にちを指折り数えて・・・
一秒でも早く会いたくて・・・
会いたくてたまらないって気持ちを抑えてた・・・
