第14章 summer memory⑨
《及川side》
ーーー・・・
りおと手を握ったまま人混みを抜け、流れる川の上にかかる大橋の上まできた。そこでやっと俺は足を止めた。
なるべく人のいなくて、ちゃんとりおの耳に届くような場所に来たかったから・・・
「ど、どうしたの・・・及川さん」
俺の背中に問いかける、
少し荒い息を整える、りおの声・・・
繋いだ手に、きゅっと力を込める・・・
言うなら、今しかない・・・!
「・・・ってるから」
「え・・・?」
「〜〜〜〜っ!」
もう、かっこつかなくてもいい!伝えろ、俺!
「その浴衣、ちゃんと似合ってっから!」
俺が口にした言葉に・・・りおはぽかんと口を開いた。
「髪の毛も化粧もちゃんとしてて、可愛いって思う。顔が赤いのは・・・お前が綺麗だから、直視できなかったからだってのっ」
「・・・・・・・・・」
あ〜もう顔から火が出るくらい恥ずかしい。
こんな小っ恥ずかしいこと言ったことないよ!
でも、伝えなきゃ、りおには伝わんない・・・!
俺は腹を括った。
「さっき言ったこと、取り消せるなら取り消したい。・・・俺よりも素直に気持ち伝えてた国見ちゃん見て、焦ってたんだ・・・」
「及川さん・・・」
「国見ちゃんと付き合えばいいなんて、これっぽっちも思ってない。・・・酷い事言って、ごめん。だから・・・」
俺はりおの、赤く染まった頬に空いた手で触れる。
「だから、他の男の前で泣かないでよ・・・」
涙は・・・俺が拭いてあげたいから。
でもりおは、何故かキョトンと首を傾げた。
「え・・・?」
「え・・・?」
「私、泣いてないよ?」
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・は?いや待って?
「国見くんと会って、泣いてたんじゃないの?俺のことで」
「え、確かにムカついたりはしたけど、泣くような事じゃないでしょ。ちょっといつもとは違ってたなって思ってたくらい」
確かにりおの顔はケロッとしてる。
え?じゃあ何?俺・・・
(国見ちゃんにはめられた!?)
りおが泣いてたとか、嘘だったのー!?