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おかえり〜I'm home〜(R18)

第9章 summer memory④





及川さんは寂しがり屋だ。

あの親睦会で酔っ払った及川さんと一緒の布団で眠った時の、
彼の、心の拠り所を探すような目は、誰かに側にいてほしくて堪らなかったからだ。

心にぽっかりと空いた穴は、誰と一緒に眠ろうが、キスをしようがそれ以上をしようがきっと満たされない。

わかっていては及川さんは、もがいていたんだ。
きっと初めて会ったあの夜も。こないだも・・・。

へらへらとしていたのは仮面で、誰よりも傷ついた心を隠すため・・・
そんな事も知らずに、私、平気で彼に酷いことばかり言ってた・・・

俺のこと、好きにならないでと言ったのも・・・
自分と関わって傷ついて欲しくないから・・・

人から愛される存在なのに、愛することを恐れてる。

明るい及川さんなんていない。明るく、振る舞っていただけだ。
誰にも迷惑かけないように、常に、笑って・・・


「ごめん・・・なさい」

「なんであんたが謝んだよ」

「私・・・、及川さんに沢山笑顔にしてもらってたのに、今、何もできないから・・・自分が不甲斐ないです」


及川さん・・・

いつだって私の笑う先にはあなたがいた。
だけど、私、今あなたが一番苦しい時に、

土砂降りの中、立ち尽くしているのに・・・
傘も何も無いよ・・・


「何もできてないなんて、そんなわけあるかよ」

「え・・・?」

岩泉さんの言葉が、手の温もりを通して伝わる。

「りお・・・あんたといる及川は、俺のよく知る素の及川だと思う。誰にだって見せる顔じゃない。言葉にはしないだろうけど居心地いいんだろうよ」

そうなのかな・・・?
確かに、よくお互いの時間を持ち寄って出かけたし、
たくさんたくさん、笑い合った。喧嘩もした。

「俺はそんな風に見えるぞ」

まだ知り合って数ヶ月だけれど、彼の心を少しでも安らげる事が出来ていたのかな・・・

「答えを出せていない及川には、まだ少し時間がかかるかもしんねぇけど・・・俺がずっと側にいられねぇ分を、任してもいいか?」


それは、及川さんを一番よく知る岩泉さんからの頼み事だった。

私に・・・彼のために出来ることがあるだろうか・・・

やってみないと、わからない、よね・・・


「・・・・・・はいっ」

及川さん、あなたの孤独が少しでも和らぐなら、
私はあなたに何を、してあげられるかな・・・


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