第142章 白い箱
「デザートですか!珍しいですね!」
流れでお弁当箱を洗う彼の背中に声を掛ける
何しろ本当に珍しいのだ
彼は必要があれば夕飯の材料を購入したりして帰宅してくれる事はある。しかしその際必ず報告、連絡があるのだ
その彼が連絡も寄越さずにデザートを購入するなんて驚きだった
しかし
「………。」
彼からは何の言葉も返って来なかった
……流れる水道の音で聞こえていないのだろうか……?
「デザートですか!珍しいですね!」
先程と同じ台詞を少し近寄って投げ掛けるが反応は無く
同じ事を繰り返す事三度目
蛇口を締めて振り向いた彼は
「何度も言わなくても聞こえてる」
無表情なのに心底呆れた様な声色で私を見下げた
私がおかしいのかと一瞬考えるが返事をしない方がおかしいと瞬時に結論付ける
「………聞こえてるんやったら返事してくださいよ……」
独断怒っている訳では無いが思いの外拗ねた様な声が出てチラリと表情を伺うが彼の視線は既に夕飯を捉えており
「うん」
返された短い返事はぼんやりした物だった
「…………。」
…………彼の珍しい行動は気になるし何時もに輪を掛けて何を考えているか解らない表情にあの箱の中身が気になって仕方がないが……食後に食べると言っていたし考えない事にした
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食事中私達は旅行の話しに花を咲かせた後に各々荷物を詰めた
以前の長期旅行はまだ暑い沖縄旅行だったので同じ日数でも洋服がかさ張りキャリーバッグには僅かな隙間しか無く季節の移り変わりを痛い程感じる
「準備終わった?」
しんみり荷物を眺めていた私に背後から言った彼を振り返り笑顔で頷くと手招きをされたので誘われるままに隣に座った