第140章 手のひら返しの虫歯
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「もうっ………!!!最悪っ!!」
「静かに。暴れないで。」
冷たい夜風の中自転車の後ろに乗りながら私は泣き叫んでいた
治療は約45分にも及びその間私は乱暴で粗暴な歯医者を睨み続けた
治療後にどうやら大昔に治療した詰め物が割れて虫歯が出来、歯茎に膿が溜まっていたらしい事を説明されたが私は来た時よりも痛む頬を押さえて頷いただけだった
治療をしたのに来る前より痛いなんておかしな話だ
私は溢れる怒りをそのままに叫んだ
「絶対ヤブですよ!!!……もー………痛い~!!!!適当な治療しやがったアイツ!!!」
「声が大きい。」
治療をしたのに更に痛んだ
その上……
「何なんですか!!8942円って!!もう9000円やんっ!約一万円やん!!!」
お会計が驚異的に高かった事も私の怒りに繋がった
「痛くて乱暴で高いって……絶っっっ対足元見てる!救急で駆け込む患者の足元見てる!!!!」
「解った解った。」
「………ムカつきます……めっちゃムカつきます……」
「見てれば解る。」
「あ"ーッ!!!アイツ絶対許さん!!!一生行かん!!!」
酷い痛みと高い治療費のダブルパンチで私は腹立たしいやら悔しいやら世知辛い涙は一向に止まず
帰宅した後も泣きながら毒付きまくった
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治療から30分後
「イルミさんあの人は神様です」
「………。」
帰宅して毒付いている内に痛みは綺麗さっぱり消えていた
猛烈に痛かったのが嘘の様に治まった
私はあの歯医者さんは凄腕なのだと確信した
苦痛のどん底から私を救ってくれたゴッド……!
少々高くとも痛みから解放されたのだからブラッ○ジャック的な先生だったのだと勝手に心底納得した
「びっくりするくらい痛くないんですよ!あんなに痛かったのに!………いやぁ……凄いなぁ……。あの人凄いですよ!次から歯医者はあそこで決まりですね!高いお金でも歯の健康には変えられませんから!」
「…………。」
絵に描いた様な手のひら返しを見せて感激を熱く語る私に彼は終始無言で冷ややかで呆れ果てた視線を送り続けたのだった