第13章 〜希望〜
『雪ちゃんおいで〜。』
そう私が呼ぶと雪は私の手に鼻をつけてクンクンと匂いを嗅いでいた。
零「案外慣れるのも早いかもしれないな。俺にはあんまり懐かなかったんだけど。そうだ、お腹空いたろ?何か食べたいものあるか?」
『久しぶりに零さんが作ったハムサンド食べたいです!』
零「了解。あとさ、真恋音。」
『なんですか?』
零「零さんって呼ぶの止めにしないか?零って呼んでくれ。その、敬語もやめて話して欲しい。」
そう提案されて、私は戸惑いながら、彼の名を呼んだ。
『零、でいいの?』
零「うん、その方がしっくりくる。」
『零。』
零「ん?」
『ふふっ。なんでもない。』
零。どう思って、何を思って、零の両親はそう、名付けたのだろう。零を産んでくれてありがとうございます。これからも零の側にずっと居ます。
零「ニヤニヤして、何考えてるんだ?」
『いや、零って誰が名付けて、どんな思いが篭ってるんだろうって思って!』
零「さぁ、知らない。そんなのどうでもいいや。真恋音さえ俺の名前を呼んで笑ってくれれば。」
そう悲しそうに、でも私をみて、笑って。そんな事でも私達は嬉しくて。名前を呼び合える存在が近くに居て、それは愛している人で。
『零。幸せだね。』
零「ふっ...、何をいまさら。俺はずっと前から思ってたけど。」
『違うよ、私も前から思ってたけど、改めて実感したと言うか。これから大尉と雪と、この子と頑張ろうね。』
零「あぁ。」
それから零が作ったハムサンドを食べた。
────
それから私達は毎朝穏やかな朝を繰り返した。たまに、零が潜入捜査や、赤井さん達FBIとの合同捜査等で、お家にいないこともあったけれど。お腹もすっかり大きくなって、貧血や吐き気も落ち着いた。再来月には、この子が生まれてくる。性別も分かって、女の子だった。
零「女の子だってな。」
『うん。』
零「俺は真恋音に似た可愛い女の子が良いな。」
『なんで?零に似たって可愛い子になるよ。』
私は良心でそう言ったのに、零は悲しそうな顔をして、
零「俺に似たら、外見で虐められるかもしれないだろ。」
そう強く言われた。