第10章 IH予選
入「及川どうした?」
辺りを見回すけど…居ない。
えーっと…と言い淀む秀に聞く。
『秀知ってるの?』
矢「外で、他校の女子に捕まってます」
入「…岩泉」
監督に名前を呼ばれただけで理解したはじめは、ハイ。と返事をすると、
岩「ユキ、お前も来い」
私を連れて外へ出る。
『なんで私も?』
岩「ユキが迎えに来たと思わせてぶつけてやる」
不機嫌なはじめの手にはバレーボール。
あー…徹どんまい。はじめ本気だわ。
『あ、じゃあイイコト考えた』
巻き込まれた私は、はじめに耳うちする。
だって巻き込まれたのは徹のせいだもん。
体育館の入口すぐの所。
秀の言っていた通り、他校の女子に囲まれた徹を見つけた。
はじめと目を合わせて頷くと、私は徹の元へ駆け寄って腕を組む。
『徹…私じゃダメだった…?』
下から徹の顔を上目遣いで見上げると、
及「えっユキちゃんっ!?そんなこと…っ痛ー…」
慌てる徹の後頭部に…凄い勢いでボールがぶつかって振り向く。
と、鬼のような物凄い形相のはじめ。
『早く来ないとはじめがキレるよ、及川くん』
ビクッとした徹にそれだけ告げて、私は徹から離れてはじめと腕を組む。
及「もうキレてるよねっ!?…てかユキちゃん!"及川くん"ってなんかヤダ!他人行儀!!」
ゴメンネ。と女の子たちに謝った徹がついてきたのを確認して、私とはじめはそのまま歩き出す。