第25章 プレゼントはあなたで
龍之介side
まずいまずいまずい!
こんなに遅くなるなんて!
チラリと腕時計を見て後悔した。
現時刻23時30分。ひ、日付け変わっちゃう!!
こんなんじゃ彼氏失格だ。
変装して顔を隠しながら必死に彼女が待つ家へと走る。
大股で走りながらも、手に持つケーキの箱を揺らさないように気をつける。
走りながら鞄を開け、鍵を手に取るも、焦って落としてしまう。
かっこ悪いと思いつつ、息を整え改めて鍵穴へ合鍵を差し込んだ。
「遅れてごめんなさい誕生日おめでとう!!」
シーーーーーーン。
「え、居ない?」
そんなはずは無い。
確かに今日は外での仕事は無いと話した。
「あっ…もしかして…」
電気をつけ、靴を脱いで揃える。
彼女の仕事部屋に行く最中に、鍵を閉めていなかったことに気づき慌てて締めに行った。
仕事部屋に入ると、パソコンに向かって何か呟いてる彼女が居た。
「この曲の時は紫の光で妖艶な雰囲気を…歌に集中できるように最低限の光…?いや、でも、ラスサビにかけて光を増やすか…?あ、広告の件は……うーん、少しイメージと違うな…相談するか…」
「百合ちゃん」
「音響はって、誰!?」
凄い勢いで彼女が振り向く。
「なんだ。龍か」
「なんだって……新しい仕事?」
「うん。最近売れてきたアイドルいるでしょ?そのライブのね」
「なるほど。君が演出してくれたライブは確かに良かったなぁ…流石有名イベントプランナーだね」
「褒めてもサーターアンダギーしか出ないよ」
「えっ出るの?」
「冷蔵庫」
「ま、まぁ、それは置いといて…今日は遅くなってごめんね」
ぎゅっと後ろから抱きしめる。
「いいよ。気にしてない」
「そう…?あと、さ、誕生日プレゼントなんだけど…まだ、用意できてなくて…何か欲しい物とかある?」
「あるよ」
ぐっ、と彼女の顔が迫る。
「龍が欲しい」
「お、れ…?」
「そう。俺」
あれ?彼女ってこんな人だったっけ?
どっちかと言うとドライな感じだと思ってたんだけど…。
彼女の目はパソコンを見ていた時と違って、ほんのりと熱を帯びている。
……ああ。最近お互い忙しくて会えてなかったから。
「私はもうシャワー浴びてるから。…浴びておいで」
ちゅ。と子供じみた軽いキスを交わし、顔の熱さを感じながらバスルームへと向かった。
………あ、ケーキしまってなかった。
