第2章 水精霊の宿る石
飲み物をすすめられたが、シドは断った。出されたものに、何が入っているとも分からないからだ。
「こっちの話をする前に、いくつか質問させてね」
「何だよ」
笑っている女性とは対照的に、シドは顰めっ面である。
「君の名前と所属は?」
「……シド・ユトエル。獣人族の犬人だ」
「君が一緒に居た女の子の名前と所属は?」
「それはセラに直接聞けよ」
棘のある言い方にも関わらず、女性は「そうだね」と言い表情を変えない。
シドは、ただイラ付いた。
「こっちも自己紹介するね!」
自身の胸に手を当て、女性はシドの目を見つめる。
「私達は、抵抗組織『セイバーズ』」
「セイバーズ……?」
耳慣れない名前に、シドは更に眉根を寄せる。
女性は、構わず続けた。
「私は、ケリィ・ルート。亜人族の翼人」
(翼人……⁉︎)
「『セイバーズ』のリーダーだよ」
驚きのあまりシドは、ケリィと名乗った女性を見つめた。
人間が進化した姿とされる《亜人族》は、《獣人族》と並んで数の多い種族……だがしかし、その中で唯一《翼人》は数が少ないのだ。
以前から減少傾向にあったが、10年前のある戦争で、その数は絶滅が危惧される程に減ってしまった。
(天人に翼人……何でこんな珍しい種族が集まってんだ?)
「ほらほら、皆も自己紹介して」
ケリィに言われ、他の面々もシドを見る。
先ず、コアが始めた。
「コア・ネウヌ。獣人族、狐人」
(セラと同じか)
「天人族のビーナ・ウーラと申します」
頭を下げるビーナを横目に、他の二人も順番に名乗る。
「ゲーラ・スルアム。鬼人族、吸血鬼だ」
金髪に紅い瞳の青年。
「ファル・ロス。ヒトと魔物の混血種」
黒髪に肌が真っ白な少年。
(吸血鬼に魔物⁉︎)
シドは驚き過ぎて、思わずキョロキョロと一同の顔を見回す。
《鬼人族》が他種族とツルんでいる事も、《魔物》の混血が存在する事も、驚愕に値する事象だ。
多種多様な種族が集う『セイバーズ』とは、一体何なのか……シドは増す混乱に唖然とするしかなかった。
「ふふふ、驚いてるねぇ。面白い顔だねぇ」
「うるせェよ!」