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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第29章 《桃源郷物語》欠片-kakera-❀伊達政宗❀





「ま、政宗っ……何するの?!」




美依が真っ赤な顔をして抗議する。
それを可笑しく思いながら、政宗は苦笑してその顔を覗き込んだ。




「なんだよ、ちょっと口付けしただけだろ?」

「そーゆーのは恋仲同士じゃないとしないの!」

「じゃあ、恋仲になればいいだろ?」

「へ?!」

「そうすりゃ口付けし放題しても、お前に怒られない」

「からかってるくせに、お断りしますっ!」




(やっぱコイツ、おもしれぇ)




政宗は何故かチクリと痛む心を隠し、美依の頬に指を滑らせた。

今日はとっておきの話がある。
最近の目下の『面白い事』が叶うような。




「美依、今夜空いてるか?」

「え、なんで?」

「面白い万華鏡がある宿があるんだ、一緒に見に行こうぜ」




不思議がりながらも、首を縦に振った美依を。
政宗はニヤリと笑って見つめていた。























「えぇと、今日のご予約は……」



桃源郷、宿主の部屋。
女は宿の予約者名簿を見て、目を見開いた。



「あら…また伊達政宗様……何回目かしら、本当にあの方は」



いつも同じお姫様を連れてきては。
こちらまで聞こえるほど激しく愛し合い。

忘れる事に涙を流しては。

己自身も忘れて宿を去っていく。
そして、繰り返す。

同じ道を──……








「何回お泊まりになっても、万華鏡を覗いて行かれるのよね……相手が忘れるなら自分も。気持ちは解るけど、これじゃ永遠に同じ事の繰り返しね。この宿に来る前に、一言『好き』と伝えれば……この輪廻は断ち切られるでしょうに」








忘れれば、全て『始まり』へ巻き戻る。
どちらも記憶が無ければ、どんなに愛し合っても、それは『無かった事』になり。

変わらなければ、同じ事は繰り返される。



まぁ、それも『桃源郷』の定めでしょう。
早く自分の気持ちに、
気がつくと、いいですわね──……



女はそう言って少し寂しげにくすりと笑い。
あの青い瞳が涙に濡れない日をそっと祈って……

宿に灯りを灯していった。











《欠片 ― Kakera ―》


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