〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第84章 純愛イノセンス《前編》❀徳川家康❀
(……夢か、今の)
朝日が障子の隙間から差し込んでいるのが解る。
俺は少し気怠い身体を起こしながら…
ぼんやりと今朝方見た夢を思い出していた。
誰かと会話していたらしい。
それも見覚えのない女の人と。
姿ははっきりしない。
声だけ、やたら鮮明に覚えている。
────なら、その目で確かめなさい
どれだけ、貴方が彼女に愛されているか
彼女だけが『光』ではない、
貴方も彼女の『光』である事を
猶予は三日間
貴方達は惹かれ合うべくして惹かれ合った
唯一の存在である事を
その身で実感するのです──……
(一体何のことだ…?)
何の事を言っていたのか、見当もつかない。
まぁ、夢だし。
気にする必要もないだろう。
そう思って、俺は隣で眠る美依に視線を向ける。
だが……
美依の後ろ姿が少し違うことに気がつき、俺は思わず首を捻った。
────なんか、少し小さくないか?
美依は元々華奢な方ではあるが、そんな比ではない。
一回りくらい小さく見える。
褥の上に出ている手も…
これでは子供の大きさのような?
見間違いかと思い、目を擦ってもう一度彼女を見る。
と、その時。
美依が寝返りを打って、仰向けになった。
瞬間──……
俺は叫びそうになったのを必死に堪え、口元を手で塞いだ。
(美依、なんで幼くなってるの……?!)
すやすやと寝息を立てる、その『少女』
年はまだ十を少し過ぎたくらいか。
でも…これは間違いなく美依だ。
だって顔つきが、面影があるから。
「ちょっと、起きて……!」
俺は何かの間違いだと、その子の身体を揺さぶり、必死に起こした。
すると…
うーんとうめき声を上げ、少女の瞳がゆっくり開かれた。
「おかあさーん、起こしに来たの?」
「お母さん?」
「……あれ、違った。お兄さん誰?」
(……誰って!!)
眠そうに目をしょぼしょぼさせながら、その子は俺をも上げてくる。
零れんばかりに大きな黒い瞳。
あどけないその表情は、やはり美依を色濃く映していて…
俺は一回唾を飲み込むと、その子に静かに問いかけた。