第6章 簡単なお別れの伝え方
「ちょっと…どういう事?」
インターホンも鳴らさず、ノックもせず、そんな無遠慮に俺の部屋に入って来るのは研磨くらいのものだ。
「は?何がだよ?」
何が?
聞かなくてもわかる。
和奏の事に決まってる。
けど、俺は無関心なフリをする。
和奏の本心にも。
和奏の涙にも。
「わかってるくせに、1人でそうやって気取ってるの…ダサいよ。」
研磨の声に抑揚がない。
いつもより怒っているんだ。
たぶん、俺が和奏を泣かせたから。
「あー、そうです。ダサいって言われたって、別にあいつの気持ちに応えてやる気はないんだから、しょうがねぇだろ。」
抱き寄せて、泣くなとでも言ってやれば満足なのか?
「本当にクロにその気がないなら、俺ももう遠慮しないよ?」
こっちを真っ直ぐ見つめて来る研磨に言葉を飲む。
遠慮って…なんだよ?
「研磨もそういう冗談言うようになったのか。」
訳のわからない事は笑い飛ばす。
俺なりの防衛術だ。
「俺が皐月を好きだと…何かおかしい?」
一切、笑わない研磨に、俺の笑いも流石に引っ込む。
「は?だって…和奏はお前のタイプじゃねぇだろ。それに…確かクラスメイトに好きな奴居ただろ?一回見学にも来てた!」
冗談じゃないのは研磨の迫力で伝わって来るが、納得出来ない。
研磨の好きな奴は別にいるはずだろ?
俺の勘違い…じゃないはずだ…。