第22章 スクリーンの中で
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目覚まし時計の電子音が鳴り響く頃、窓の外はまだ薄暗かった。
カーテンの隙間からは夜の暗闇が見えている。
大きく伸びをし、ベッドから起き上がる。
彼女にはもう少しだけ眠らせてあげよう。
これは勝手なイメージだが、彼女は寝起きの機嫌がとても悪そうだ。
そんな事を思いながら、彼女が眠っているであろうベッドをチラリと見た。
昨日、私が眠る時には気持ち良さそうに寝息を立てていた彼女。
そんな彼女が眠っていたベッド。
窓際に置かれたそのベッドに、彼女の姿は無かった。
嫌な予感がした。
私は直ぐさま携帯電話を手に取り、彼女へ電話をする。
鳴り出す呼び出し音に合わせ、彼女の携帯電話の着信音が部屋中に響いた。
温泉にでも入りにいっているのだろうか…。
いや、そんなはずは無い。
彼女が向かう先はあの場所しかない。
私はコートを羽織ると部屋を飛び出した。
昨日、彼女から受け取った日記帳。
その日記帳の最後のページにあった言葉。
『2月8日月曜日 死にたい』
私はホテルから直ぐの海岸まで走る。
もつれる脚に何度も転びそうになりながら。