第10章 我慢
上司「少年は逮捕されてから黙秘を続けています。自供を促すための材料が欲しいのです。少年は図書館をよく利用していたそうで、読書傾向から何らかの揺さぶりをかけることができるかもしれません」
部下「犯行には専門知識がないと不可能な種類のものがありました。そうした専門書をもし少年が借り出していたら検察側の判断材料に・・・」
部下の男が気を利かせたつもりで口を添える。
わたしはカチンときた。
稲「図書館法第32条に基づく守秘義務により、ご要望にお応えすることはできかねます」
司令には穏やかな声の色に、覆すことが途方もなく困難な強い意志が見える。