第46章 どんなに強い者も
「ナイトアイ!確保を!!」
私がハッと息を飲んでいる間に、出久くんは治崎さんを殴っていた。
私がハッと息を飲んでいる間に、相澤先生は治崎さんの“個性”を消していた。
私がハッと息を飲んでいる間に、サー・ナイトアイは通形先輩とエリちゃんに駆け寄っていた。
私もと慌てて個性を発現させてキョロキョロと辺りを見渡す間に、多くの怒号が聞こえた。
「…いい、加減に…!!!」
「ルミリオンがここまで追い詰めた!」
「このままたたみかけろ!!」
「起きろクロノォ!!」
「デク!!」
私という素人がダバダバやっている間にも状況は動きに動きまくり、気がつけば相澤先生が攻撃されて、出久くんが突き飛ばされて、治崎さんが地形を変化させていた。
剣を手にしたまま、私はどうしたら。
考えろ、考えろ、考えろ
はやく、
私だって
『俺、やってやる。』
ぐちゃぐちゃの頭の中に、カッコいい声が、響いた。
先輩が私にくれた、先輩自身に送った言葉。
私も、やらなきゃ。
やらなきゃ、ダメだろ。
周り、見ろよ。
静かに深呼吸。
ジャンプしつつ周りを見渡す。
私がこんなことできてるってことは、相手も結構きついはず。私がどう動くかで、結構変わるかも。
みんな私なんて放ってドンパチ戦ってる。
治崎さんが、地形を変えて、派手にドンパチ。
出久くんはそれを避けて。
ナイトアイさんは、エリちゃんと通形先輩を抱えて守るように。
先生は誰かの"個性"を受けて、動けなくなっていた。
「イレイザー!」
私は先生のもとへ駆けた。
先生は、誰かに、連れていかれそうになってる。
「ダメ!」
だって、先生が死んじゃう。
足がそう動いちゃったんだ。
出久くんの加勢に行かなきゃだけど、
でも、死んじゃう
彼らの後を追って、私は穴に落ちた。
本当に、これでいいのかは分からない。
分からないけれど。
「そこのヤクザまぁぁった!!」
落ちた穴は暗かった。
マスクをかぶった人が、うつ伏せの先生に馬乗りになっていた。
「お控えなすって!」
必殺技のヒントの為に見た映画で怖そうな人が言ってたから、そのセリフで威嚇した。
「は?」
「聞こえませんでした!?お控えなすってください!!」
ヤクザは、ぽかんとしていた。