第23章 呪われ
『おかーさん!』
『なぁにひよこ。』
『んひひっ!よんでみただけ!』
『えぇー!もう!』
『ひーよこ。』
『なぁにおかあさん!』
『呼んでみただけー!』
『えー!ちゃんとひよこへんじしたのにー!』
『ほらほら!あっ!』
お父さんが、帰ってくるよ。
懐かしくて懐かしくてたまらなくて、
いつだってあの頃に戻りたいって思ってる。
忘れたくて、忘れようとして、でも忘れられないのは
大切な家族だからで。
忘れたらきっと、本当にひとりぼっちになっちゃうからで。
そんなふうに弱虫な自分が、嫌だった。
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目を覚ますと、知らない景色があって知らない匂いがしたから、しばらく目を瞬かせた。
それからムクリと起き上がると、みんなまだぐっすり眠っていた。三奈ちゃんは寝相がアレで、頭があったところに足が来ていた。
よく寝坊するタイプなんだけど、違うところで眠ると早く起きてしまうみたいだ。
ぽけーっと眠っているみんなを眺めて、目をゴシゴシとこする。
あ、また濡れてる。
手をじっと眺める。
夢の内容はいつも忘れているのに、寂しさだけが残っている。
本当はそんな、おせんちなの嫌だ。
みんな全力で頑張っているし、多分みんな楽しんでいる。
みんなの雰囲気、悪くすんのだけは、絶対にダメだ。
今日は沢山頑張って、沢山笑おう。
朝の低血圧の頭で、そんなことをぼーっと考えた。
自分のことでいっぱいいっぱいのクセに、私はそんな偉そうなことを考えた。