第11章 〈番外編〉長い夜
「それにしても、安藤ってぬけてんな……。気絶するって……。」
「安藤くん、いったい何しに来たんだ……。」
「ひよこちゃん、怖がりだからさ、僕たちに助けを求めに来たんじゃないかな。」
「それで恐怖で気絶するって……。」
「まぁ、そういう所も彼女らしいというか……。」
この間、ひよこちゃんがステインの前に飛び出したと聞いて、僕はキモを冷やした。こんなに心配する人がいるんだってこと、ちゃんとわかって貰わないといつか、本当に危なくなってしまう。
数日前は、ひよこちゃんの事で心配ばかりだったのに、今はその顔を見るだけで安心する。
「凄い人なのか、そうじゃないのか……分からないな、安藤くんという人は。」
「そういうところも、いいところだよ。」
ひよこちゃんのこと、本当に大切なんだ。
今隣で眠る彼女の右目には、眼帯がついている。彼女は寝ている時もそれを外さない。一体そこにはどんな事情があるのか、ひよこちゃんに一番近い、と自負している僕も、聞いたことがなかった。
大切にしたいのに、彼女を襲うなにかは、もしかしたら内から来るものなのではないか、その眼帯で隠した奥にあるのではないかと時折不安になるんだ。
「さっきの話……。」
「ん?」
轟くんがポツリとこぼした。
「友達って…なんなのか……。なんとなくわかったような気がする…。」
「そうなの?」
「言葉には出来ない……。難しいんだな。明日の朝、安藤に話してみる。」
「そっか。友達って大体、そーゆーもんだよ。」
「そうだな。」
「そういうもんか。」
ひよこちゃんの顔にかかっていた黒々とした猫っ毛を耳にかけると、ひよこちゃんは擽ったそうにした。それから、僕は反対側を向いて寝た。うん。最近よく眠れていなかったけど、今日はなんだかちゃんと眠れそうだ。
……次の日の朝、ひよこちゃんがこれ以上ないくらい真っ赤な顔をして硬直してしまったのは、また別の話。