Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第22章 「母さん……」
「ルルゥ、おねが……目を開けてよォ!! ねぇ、まだいっちゃダメ……! ル、ル………………ルルゥゥ!!」
大粒の涙を流し、ただルルを想って泣き叫ぶエミリとルルの死。それに心を痛めるのは、リヴァイも同じだった。
押し寄せる後悔の念に固く目を瞑り、何とかして振り払おうとするが、エミリの声がそれをさせない。
(クソッ……お前に、そんな顔させたく無かったってのに)
エミリがルルとの約束を果たせなかった。それは、リヴァイもエミリとの約束を守れなかったということ。
エミリがルルと交わした約束を引き継ぎ、必ず助けると彼女に誓ったというのに何もできなかった。
「……ッ……ハハッ、一足……おそかった、ようだ、ね。けっきょくは、きみも……僕らとおなじ、あな、の……ムジナって、ことさ……」
ルルを抱き締めたまま背を丸め、地面に座り込んでいるエミリに向けられた残酷な言葉。
それは、冷たいナイフとなってエミリの心に傷跡を作った。
ただルルを助けるために手を汚し、それでも約束を果たすことはできなかった現実。それは、一生エミリにまとわりつく大きな闇となる。
オドはそれをわかっていて、エミリの心に住み着いた黒い影をわざと煽っているのだ。彼女をこちら側へ引きずり込むために……
「きみは、裏切ったのさ……助けると豪語して、おきなが、ら……命を救うことが、できず、そのうえ……人を殺めた。それが、これからきみ、が背負う……大きな罪、だ……!!」
切り取られた腕を抑え、エミリに語りかけるオドの瞳には深い闇と憎悪がチラついていた。呪いかけるかのように発せられる彼の言葉は、どんどんエミリの心を蝕んでいく。
「…………………罪……」
「そうだ。罪だよ。きみは、約束も守れない……ただの、"人殺し"だ。そして、」
切断されていない方の手にナイフを手にしたオドが、エミリの背後に立ち、それを振り下ろす構えをとる。
「今度こそ……お前も、死ね」
再び無表情を顔面に携え冷たく言い放った後、生気を無くしたかのように動かくなってしまったエミリの頭上へ刃を向けた。