Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第17章 未練
「あのな、いつも休めっつってんだろう。何故お前はいつも言うことを聞かねぇ」
「……だって、今じゃなきゃ意味ないんです」
あれだけ大口叩いておいて結局このザマだった。全て自分の詰めが甘かったせいなのだ。
それなのに、悠長に休んでなどいられない。
こんなことでは、いつまで経っても薬剤師になんてなれない。
そんな思いが強く心の中に渦巻いて、じっとしていることなどできなかった。
「皆に支えてもらって、私は頑張ってこれました。それなのに、私は何も返すことができなかった。
しかも、時間内に課題すら完成させられなかったんですよ?」
恥ずかしいことに試験開始直後は、他の受験者たちの腕前に圧倒されて、作業に移る時間が遅れてしまった。
それも時間ロスの大きな原因の一つだ。
後は単純に知識と経験の少なさが、作業の効率を悪くし、結果、時間内に課題を終えることができなかったのだろうと踏んでいる。
「……こんなんじゃ、駄目なんです」
再び震えるエミリの声。
それをリヴァイに悟られぬよう、全身に力を入れて震えが伝わらないように堪えていた。
しかし、体はエミリの言うことを聞いてくれない。
もう、誤魔化しきれないのではないかと思えるほどに声は震え、それを隠したいのに、エミリの思いは止まらなかった。
「こんなことで躓いていたら、私は……いつまで経っても私は、薬剤師になんか……なれな」
「惜しかったな」
エミリとリヴァイの声が重なり、エミリは思わず口を閉じる。
(………………惜し、かった……?)
心の中で、リヴァイに掛けられた言葉をゆっくりと繰り返した。その途端、ドッと心に込み上げてくる様々な感情に、思わず胸を抑えた。
そして、気づく……
「…………あれ……」
自分の両目からとめどなく流れる、悔し涙に。