第1章 大嫌いな上司
私たちはディナーを四人で済ませてお店を出た。
姉と壮さんは二人で帰っていって残されたのは私と裕さんだった。
私が呆然と立っていると裕さんが「今から、二人で少し飲まないか。」と私を誘った。
別に予定もないし、「いいですよ。」と軽く返し二人で歩き始めた。
そこの周辺には個人店の居酒屋さんなどが数々並んでいて、私たちはそのうちの一店舗の焼鳥屋へと入った。
「とりあいずもも二本とかわ一本。あと生ビールの中。お前は?」自分の分だけ注文すると私に何を頼むかを聞いてくる。
私は「ももとつくね、あとぽんじり一本づつと生ビールの大で。」と自分のものを注文した。
店員さんは注文を聞くと厨房へと戻っていく。
「大飲むとか、ストレス貯まってるのか?」
いや、貯まってんのはお前のせいだよ、鬼畜上司。
ただ、壮さんに裕は不器用だからと聞かされて少し恨めない部分があった。
「今日は仕事頑張ったししばらく家でも呑んでなかったので。今日は呑もうかなと。」
お酒に対して強くもないのだが呑むのは好きなのでやめられない。
すると手元に生ビールが運ばれてきた。
酒に強くないといっても私は呑んだあとの記憶が少しうろ覚えになるだけなので、そんなに問題はなかった。
これでキス魔とかなら最悪だが、別にそんなわけではない。
公共の場で呑むのは避けていたが、今日は人ときてるので最悪助けてくれるだろう。
そんな甘えがあった。
ましてや、部長相手。
いつも私にばかり仕事を押し付け、どこかの挨拶回りの時も私だけを連れ回すのだからたまには迷惑私がかけても問題ないだろう。
そう思いながら私はビール片手に焼鳥を食べはじめた。
正直帰り際にはかなりよっていた。
どこを歩いているのかもわからないくらいには。
お酒が弱いのを忘れていたからだろうか。
視界はゆらゆらと揺れているし、かろうじて何かが支えになって歩けている。
「もう....無理...歩きたくないー。」
柄にもなくわがままを言う。視界がぼんやりしすぎてはっきりとは見えなかったが、部長が微笑んでいた気がした。