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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第6章 籠鳥恋雲


潤side


真昼の最中から、よくもまあこんなに暇な人間がいるものだと、少し呆れ気味に室内を見渡した。


この貴族会館で執り行なわれる式典に招かれているのは、いずれも爵位を与えられた者ばかり。

だが中には伯爵、公爵などという身分を持ってはいるものの、その財力を失いかけて落ちぶれかけた連中もいる。


この中の何処かに、腹心の友だと笑いかけてくれていた男は来ているのか‥?


俺の目の前で心底大事にしていたであろう情人に冷たい仕打ちを受け、挨拶も出来ずに屋敷に引き取ったと、後から聞いた。

その後、臥せていたとも‥風の噂を聞いていた。


愚かな男だ‥。


それほどまでに大切な者を、俺に見せようなどと馬鹿な考えを起こしたばかりに、その者を失ってしまった気の毒な雅紀。


あの者の淫欲に満ちた身体がさぞかし恋しかろう。

夜な夜な慾に濡れた眼差しに誘われ、淫らな孔の与える快楽に溺れていたのだから、その喪失たるや、いかほどだったろう。


あの日の慾で穢れた藍天鵞絨を送りつけてやったことで、少しは諦めもついたろうか‥。

それとも、さらに失望を深めただろうか‥。


俺は大理石でできた階段を上がり、吹き抜けから入り口を見下ろすことのできる場所に立つと、次々に扉をくぐる御仁たちを眺めていた。



すると‥厳格そうな年配の男に続いて、それとは対照的に穏やかな笑みを浮かべた若い男が、周りの者と会釈を交わしながら入ってくるのが見えた。


‥‥来たか。


もしかしたら来ないのではないかと思っていた男の登場に、ぞくりと背筋が震えた。


あいつは俺を探すだろうか。

そして自分の情人を奪い取った俺を見つけて、どんな表情(かお)をするのだろう。


目を逸らし、逃げるのか‥

嫉妬に燃える目で、俺を焼き尽くそうとするのか。

愉しみだよ‥雅紀。


大野智に狂わされたお前に会えることが、こんなにも俺の心躍らせるとは思わなかった。


‥‥知りたいか‥?

今、あの者がどうしているかを‥

昼間でも薄暗い屋根裏部屋で、何をしているのか‥


俺は淫欲に染まった身体を仰け反らせ、もっと乱れたいと喘ぐ男の姿を思い出しながら、階下にいる雅紀を見ていた。



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