rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第24章 nothing in return
「ハァ……、…クソ!」
ため息と失言を零しながら部屋を出る。
そんなシルバーの視界に映ったのは、暗い空に覆い掛かる曇りがかった世界。
生憎の天気は、雨粒が彼の肩を濡らしていた。
―――。
――。
「……」
友人の家に着く頃にはちょうど、日付の変わる直前に差し掛かるだろう。
いくら地下鉄がずっと走っているにしても、夜が深くなりすぎるのは普通に避けたかった。
名無しは駅に到着すると、走行頻度の落ちた時間帯、ホームで一人電車を待っていた。
「……」
大体、誕生日当日に自分と過ごそうとしている友人は、正直少し変わっているのかもしれない。
交際相手を優先するべきだとちゃんと釘もさしていたのだけれど、友人が選んだのは男ではなく、自分だった。
単に付き合いの長さの順だ何だと言っていたのは覚えている。
理屈としては通るけれど、一緒に過ごせない異性のことを考えると、当然気の毒にも感じた。
が、名無しはそうやって不思議に感じつつも、自分に祝われるのを楽しみにしている友人の存在が有難かったし、素直に嬉しいとも思った。
「、……」
鞄のなかに準備したものを早く渡して、心から祝ってあげたい。
やがて待ち焦がれた数分後、名無しの髪を靡かせるのは、ホームに吹く横風だった。
スピーカーの自動アナウンスが響くと、それらはようやく、次の電車の到着を彼女や駅に居る人々に報せていた。