第14章 新しい生活
響「轟は…なに?」
さっきのニヤニヤから、さらに深い笑みになって、私に詰め寄る響香。自分で墓穴を掘ってしまったことで焦って、何も弁解する言葉が浮かばない私はただあたふたと「ちがう」「なんでもなくて」と繰り返すしかなかった。
そんな時だった。共有スペースのドアが乱暴に開かれた。
爆「…なにしてんだ、こんな時間に」
『っか、勝己くん…!?』
響「あれ?爆豪こそなんで…」
突然の勝己くんの登場に2人揃って驚いた。心なしか彼の機嫌が悪いように感じるけど、寝起きだからだろうか?
爆「…別に。喉乾いたから水飲みに来ただけだ」
『そ、そっか…』
勝己くんはそう言ってシンクに向かい、水道でコップに水を注ぐ。
ジャーっという水の音が共有スペースに響く。さすがに彼がいる前でさっきの話の続きもできず、2人して黙り込んでいると、ふいに勝己くんが口を開いた。
爆「………俺は興味のねえ女に、名前で呼ばせねえよ」
『え…』
さっきの話を聞かれてた!?という焦りと、今言われた言葉の意味を考えるので、私の思考回路は停止した。
それって、つまり…
緑「あれ?3人ともまだ起きてたの?っていうか、珍しいメンバーだね…?」
意味を解釈しようとしたその時、複数名が共有スペースにやってきた。先ほどいなかった、救出組だ。
響「あ!え、えーっとね、みんなを待ってたんだよ!」
突然現れた面々に、響香もまた混乱したらしい。慌てて本来の目的を彼らに向けて口にした。
『っ、そう!みんなを待ってたの!勝己くんも、お願い、夜遅いけど少しだけお話しさせてください!』
私は勢いよく頭を下げる。
切「頭上げろって!そんなんいくらでも聞くからよ!」
八「そうですわ、頭を上げてください。私たちに話ということは…きっとそういうことでしょう?」
飯「もちろん、僕は君の話を聞くよ!」
麗「あ、ウチは席外した方がええかな?」
『そんなことない!お茶子ちゃんも、梅雨ちゃんにも聞いてほしいの…』
蛙「ケロ…」
麗「わかった、マナちゃんの話、聞かせて!」
『…ありがとう、みんな。えっと…何から言えばいいかな…
私、すごく嫌なやつなんだ』
私がそう言った時、目の前のみんなの顔は見れなかった。けれど、誰かの息を呑む音だけは鮮明に聞こえた。