第24章 『融氷』
男にも匹敵するのではないかと驚くほどの強い力で、勢い任せに押し倒され。
仰向けに寝転がった俺の身体の上へ、蓮が荒々しく跨った。
天井を背に、鬼気迫る形相がこちらを睨みつける。
纏っているのは怒りか、それともーーー
「綺麗事並べてんじゃないよ。
あんただって女遊びのひとつやふたつ経験あるでしょーが」
「……確かに昔は、荒れてた。
だから分かるんだ。いつかお前も後悔する時が来るってーーー」
「うるさい!!」
こいつの事だ、
てっきり拳が飛んでくるのかと思ったが。
声を張り上げた蓮は突如、
自らの衿合わせを無造作に開いたのだ。
「偉そうな口叩いてるけど……
あんたも所詮は男。
卑しい本性を暴いてあげる」
左右に大きく開けた衿が肩を滑り落ち………
露わになったのは、滑らかな肌と緩やかな曲線を描いた形の良い膨らみ。
目線を下へ移せば、乱れた裾の間から艷やかな太腿が覗いている。
「どうせ数えきれないくらい女抱いてきたんだろうし、私とも遊んでよ」
「断る。……着物を整えろ」
「据え膳食わぬは……でしょ?
安心してよ。皆には黙っててあげるからさ」
「聞こえないのか?断ると言ってるんだ」
「ふふっ、良い人ぶって」
長い黒髪の束がサラリと落ちてきて、惑わすような甘い香りが鼻を掠めた。
邪気に満ちた、皮肉な笑いーーー
そんな目をするな。
きっと、本当のお前はそんなんじゃないだろ。
僅かな襖の隙間から垣間見えた、あの慈しむような温かい笑顔が脳裏に焼き付いてる。
「もう、やめろ。
周りを悲しませるな」
「悲しむ?誰が?
ハッ、悲しむ奴なんてどこにも居ないから。ねぇほら、たっぷり楽しも………」
「俺が悲しむ」